夕日の中の「小山の大将」

秋の夕日をあびる時心にはいろんな想いが去来する
落胆したこと 寂しかった時 男泣きして歯を食いしばった頃
連想はとめどない

桜の樹木の億にしずむ夕日の方向から少年の声が高々と聞こえてくるようだ
A君の声 B君の声 そしてH君の声
皆元気で明るかった


私たちは 未だ幼い子達も仲間に入れてよく遊んだものだ
すぐ傍のレンガ工場の丘に皆集まった
小さい子たちには気を配りながら丘の上から突き落とした


大きな子には思い切り力を込めて突き放した
勿論私も小さな子数名から突き飛ばされる
手や足には擦り傷が絶えない
転んでは上り 突き飛ばされては歯を食いしばって
丘の頂点を目指した

泣く子もいたし 汗をかきながら皆息をはぁはぁ荒げていた
夕日が少年たちを照らし 今にして思えば天地の限りない祝福の中に
あったように思う

闇が迫るころ 誰となく歌いだした
「小山の大将我一人 後から来るもの 突き落とせ
転げて落ちて又登る 赤い夕陽の丘の上、、、」
何度も歌っているうちに 涙が込み上げて 赤い頬っぺたを濡らした


周囲の子らの家からわが子を呼ぶ母の声が聞こえてくる
それをきっかけに皆三々五々に散っていった
「また 明日もね、、、」
背中でそう言っていた筈


私は80歳近くになつても夕日の中の少年の あの歌声を
折に触れて思い出す
自然に小山の大将と歌っている


そしてあの頃の温かい涙をながしている





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